権利確定日の前に空売りしたら儲かるのではないでしょうか?
権利確定日を過ぎると、株価が下がると聞きました。では「権利確定日の前に空売りをしたら儲かるのでは…」と思うのですが、どうでしょうか?
空売りとは、株価が下がりそうな株を信用取引で借りて売っておき、株価が下がったところで買い戻して利益を出す投資です(信用売りは同義語です)。
権利確定日後の株価の推移ですが、株価が下がりやすいのは事実です。しかし、残念ながら「権利確定日前に空売りをしたから」といってかんたんに儲けられるわけではありません。
権利確定日の前に空売りをしても儲けるのがむずかしい理由には、主に下記の3点があります。
儲けるのがむずかしい理由1:一般信用は在庫切れで空売りできない可能性がある
信用取引には、2つの種類があります。そのうちの一つが、証券会社が独自に選んだ銘柄で取引できる「一般信用取引」です。
一般信用取引は、空売りできる株数(在庫)に限りがあります。そのため、空売りをするには在庫の残っている銘柄から選ぶ必要があるのです。
儲けるのがむずかしい理由2:制度信用での空売りは逆日歩が発生する場合がある
信用取引の2つの種類のうちのもう一方が、金融商品取引所(証券取引所)が一定基準で選んだ銘柄で取引できる「制度信用取引」です。
制度信用取引は、一般信用のように在庫切れで取引ができなくなることはなく、金融商品取引所が空売りを認めている貸借銘柄に関しては、自由に空売りができます。
しかし、制度信用取引で株を空売りする人が増え、株が品薄状態になった場合、証券会社は結果的に機関投資家などに株を借りることになります。
このことは投資家自身に特に関係ないことに思いますが、実はそのときに「逆日歩」とよばれる手数料が発生してしまうのです。
仮に、1株あたり10円の逆日歩がついてしまうと、なんと「100株で1,000円を投資家が支払うハメ」になってしまうのです。
スミレ
さらに、空売りする人が増えるほど逆日歩の金額は高くなりますし、どのくらい逆日歩が発生するのかは、その日の取引が終わらないとわからないといった恐さもあります。
特に「権利確定日の前は空売りをする人が増える」ので、逆日歩には十分注意する必要があります。
儲けるのがむずかしい理由3:空売りだけにかかるコストがある
空売りでは逆日歩以外にも「貸株料」や「配当落調整金」など、現物取引では発生しないコストが発生します。
貸株料
貸株料とは、信用売りをする場合にかかる「株のレンタル料」のことで、取引金額に応じた金額となります。
配当落調整金
配当落調整金とは「配当落ちによる株価下落の調整金」です。
配当落ちとは、権利付き最終日の翌営業日をもって「配当を受ける権利が無くなること」をいいます。もしくは、その際に「配当額分だけ株価も下がること」を指したりもします。
この配当落ちを利用して空売りすれば、かんたんに儲かるようにも思えますが、実際は空売りをしつつ権利付き最終日をまたいでしまうと、上記で説明した「配当落調整金」を支払うことになります。
支払う配当落調整金は「配当額相当分」となり、理論的には下がった株価分と同じくらいと考えることができるので、実質的に儲けることはできません。
スミレ
空売りで少し利益が出たとしても、実際は支払うコストの方が高くついてしまう可能性もあるのです。
そもそも、権利落ち日だからといって必ず株価が下がる保証もありません。さらに空売りのコストもあると考えると、権利確定日の前の空売りは、あまりおすすめできる投資法ではありません。
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お悩み相談室 室長のプロフィール
スミレ(投資ブロガー)
20代の主婦投資家です。株式投資歴は8年を超えました!「株式投資の育て方」という投資ブログで、株式投資の考え方や注意点などを、初心者の人にもわかりやすく解説しています。
スミレ
特に権利確定日付近では、株主優待のクロス取引をする投資家が増えるので、銘柄によっては株の在庫切れで空売りできないことがあるので注意が必要です。